「あなたのお店が他人からどう思われているか」真剣に考えたことありますか?
実はこれ、商売に一生懸命なあまりに、見落としがちな盲点だったりするのです。
心理学でいう「ジョハリの窓」に当てはめ、お店という存在をいろいろな立場からみると、それぞれ見え方が違い、お店とお客様という関係の中に、いろいろな壁が存在することがわかります。
ジョハリの窓とは、自分をどのように見せ、隠すのかを知り、人とのコミュニケーションを円滑にするために考えられたモデルです。
自己には、
- 「開放され、自分はもちろん、周囲の人もわかっている自己」
- 「自分はわかっているが周囲の人はわかっていない自己」
- 「自分はわかっていないが、周囲の人はわかっている自己」
- 「自分でもわからず、周囲の人もわかっていない自己」
これらがあるといわれています。
自分のお店をこれらのそれぞれの窓の部分に当てはめて考えていくと、客観的な分析ができます。
お店の入りやすさ、商品の質、店の雰囲気、従業員の態度、価格の満足度の点において、通行人、従業員、一見客、常連客の視点で「どう見られているのか」をじっくりと考えてみましょう。
次に、自分のお店の成長過程はどこか、ということに着眼します。ライフサイクルのお話をお店に当てはめて考えてみましょう。お店は順調に成長すると、次の4つのステップを踏むといえます。
- 店舗開発期
- 自転車操業期
- 繁盛期
- 閑古鳥マンネリ期
どんなお店でも、この4つのステップを辿り、その隆盛を繰り返しています。つまりは、自分のお店がどの時期にあるのかを知り、それにあわせた商品、営業、広告を仕掛けていく、ということです。例えば、店舗開発期であれば、お店の知名度を高めるために、お店の店名よりも業種名を大きく表示することが重要だったりするのです。
今の日本経済は、誰もが感じる通り「衰退期」で、いろいろな商売が発想を変えなければならない時期にきているのでしょう。
また、衰退期というのは消費成熟社会とも言い換えられて、「競争」の時代から「共生」の時代への変化の時期でもあり、商売は顧客やクライアントの共感を得ることができなければより厳しくなるのです。
私は、この「共感」を得るという発想が、今ご商売をおこなう人に圧倒的に欠如していると感じるのです。
あなたは、共感を得るために、具体的に何をどうすればよいか、思いつきますか?
「誘客を成功させる秘訣は?」ということをよく聞かれるのですが、そんな方は大抵、この共感というものを理解できていません。なぜならば、誘客の仕組みは、ある同じ価値観を持つ人に対してメッセージを放ち、共感を得る作業なのだからです。だから自分の商売に関連する「ある価値観」とはほかにどんな価値観があるのか、自分はどんな価値観を掲げるのか、その価値観をどう言葉に込めるのか、その価値観をどう商品で表現するのか、その価値観をどう売り方(接客)で表現するのか、などという発想が必要になってくるのです。
誘客を活用するためにはまず、自分のお店の地理的状況を把握しないといけません。把握ありきの仕掛けです。
立地とは、あなたがそこで勝負する戦場です。お店を構えてビジネスをおこなう場合、この立地をしっかりと把握すること。立地調査の重要性はとことん理解しておいてください。
「もうお店出しているんだけど、立地を調べる意味あるの?」なんて思わない。意味はちゃんとあるのです。
どの土地でどんな商売をおこないどんな客層にきてもらうのかを設計するのが、あなたのやるべき立地調査です。そして、その調査をもとに設計図を書く。それがあなたのビジネス戦略。看板はその戦略を遂行するための戦術(ツール)です。
ここでまず確認してほしいことが2つあります。
あなたのお店が徒歩や自転車で来店してくる人が多いお店(通行人対象立地)か?
それとも
自動車で来店してくる人が多いお店(ロードサイド立地)か?
一般的に通行人対象立地というのは、駅前の傍らとか商店街などが該当し、ロードサイド立地は、郊外店舗やショッピングセンターなどが該当します。
あなたのお店の地域は、商店街、オフィス街、学生街、住宅街?どこにあるか。
じつは調べることはこれだけで半分終わっています。
これで立地のタイプがわかるのですが、タイプがわかると、どんな種類の看板を使うか、どんな看板をデザインするかが、おおよそ決まります。
次に確認してほしいことですが、これはできるなら、1ヶ月くらいは自分のお店から半径500メートル以内をくまなく歩き回って、身体感覚で調査してほしいのですが、「人の流れはどこからどこへ、どのように流れているのか?」ということをみるのです。町内まで記載された地図を用意して、探偵気分で流れをみてください。調査地域内に流れは1つだけとは限りません。もしかしたら2本も3本も流れがあるかもしれません。曜日、時間によって流れが変わったりなくなったりするかもしれません。この流れをすべてみつけて把握するのです。誘客とはこのように人の流れを見極め、商圏に看板を設置し、自店を地域の人々に知らしめる仕掛けです。
先日、テレ朝の夕方ニュース「スーパーJチャンネル」から看板評論家としてコメントをいただきたいという取材依頼があったのですが、その内容とは、九州のとある町で変な看板があるのだけれど、その看板についてどう思うのか教えてほしいとのことでした。
変な看板とは、適度な大きさのパネル板にひとこと矢印付きで「来ればわかる」と書いてあるだけなのです。町の生活者の方々に訊くと地元では有名だそうです。なんだろう?って思いますよね。ちなみにこの看板は一定の間隔をあけて町のあちこちに設置されており、看板を辿っていくと段々と町から離れ、しまいには山の頂上の方へ向かうことになってしまいます。そして行き着く先はというと、なんと石材屋さんだったのです。そこでこの石材屋さんの社長にインタビューが始まるのですが、聞いてびっくり、「来ればわかる」というのは会社名だったのです。この看板についてどう思うかというコメントを求められたのですが、テレビの取材が来るくらいなのだから販促効果はあります。町でもかなりの生活者の方々が知っているので、口コミで広がったのでしょう。私に言わせれば、これぞ「誘客」なのです。
現代の立地戦略は、今までと全く考え方が違います。ステレオタイプの「この立地は良い悪い」という判断は、現在ではできないのです。
必勝のキーワード
- 「地域同化による専門店化」
- 「地域他店との差別化による専門店化」
ひと昔前までは、「商売とは一に場所で二にも場所」みたいな考え方があり、確かに集客性のある場所というのは存在していました。しかし、現代では、一年前に賑わいを見せていた場所に閑古鳥が鳴いたりと、人の流れは変わりやすい状況です。多くの評論家などは、大手が運営する郊外の大型店に客足をとられたとか、そういうもっともらしい理由をあげますが本当にそれだけが理由でしょうか。
私は、お客様は他店に足を運んでいると考えるより、自店に来るはずのお客様自体が消えてしまったというのが、問題の本質だと思っています。他店に奪われるという発想は、日本が高度成長時代の発想であり、現代の日本は成長がいったん行き着くところまでいった成熟経済の時代だと思います。成熟経済の時代は、生活者の購買意欲が低くなります。欲しいものは既に手に入れているか、我慢できる状況ですので、買い物は同じ品質なら安い店へと流れてしまいます。
そこで必要なのは、お客様を生み出す(創出)立地戦略です。今までは、お客様を奪い取る立地戦略でした。
地域同化による専門店化とは、例えるなら、お店をその地域の象徴のような観光地としてしまう戦略です。半径100メートル以内の街の雰囲気にあわせて、その雰囲気を象徴するようなお店を構える戦略です。別に内装を変えろとか商品を変えろとか、そういうことではありません。あくまで演出です。もし商店街ならその商店街の雰囲気を分析し、昔ながらの老舗が多い商店街だとした場合は、自分のお店がいかにも老舗風のお店であるかを演出するのです。閑静な住宅街なら、主婦が趣味もかねて運営する手作り感覚のお店を演出するのです。
アイデアは基本的になんでもありです。大切なのは、徹底して雰囲気をつくるということです。この地域同化による専門店化というのは、「商品を買う」という目的に+αとして、ちょっとしたエンターテイメント性を出すのが重要なポイントです。」
地域他店との差別化による専門店化とは、例えるなら、ポリシ-やセンスを全面に演出した、こだわりの個人商店化です。
ただし、そのポリシ-やセンスには、「本物志向」「健康志向」「高級志向」「手作り志向」という感性が必須です。この4つの志向を望む生活者の傾向は、今後10年は続くと思います。注意書きしておきますが、商品を変えれば良いというのではありません。物売りの発想をいったんやめて、地域のお客様に商品以外にどういうメリットを無償で与えることができるか考えてください。
八百屋なら野菜を売るお店ではなく、野菜を通してお客様の健康生活を提案するお店。
本屋なら売れ筋の本を並べるだけのお店ではなく、読書を楽しむ人たちが、交流できる場所を提供するお店。
このように「商品」+αのポリシ-やセンスを足していくのです。難しく考えなくても大丈夫です。街を見渡せば、ちょっとフラッと寄り道して入ってみようかと思わせる面白そうなお店が圧倒的に少なくなっていませんでしょうか?ある意味それがチャンスなのです。
あなたが客観的に「この街にこんなお店があればいいな」と思えるお店を考えればいいのです。原点はそれです。このようにその地域を考慮した店舗を演出することが、必勝の条件となります。